6月某日、岐阜県に研修に行った帰り、あるところへ立ち寄ってきました。
アメーバのようなひとつながりの屋根。
オフィスのボリュームを取り巻きながら周囲に向かって伸びていきます。
一続きに走る長く連なる軒。この手が届くぐらいの高さというのが、親近感があって良いですね。
ちなみに軒下にはベンチがあって一休みできるところもあります。
内部から見た屋根スラブです。
緩やかに曲がる2つの棟から屋根が懸垂状に垂れ下がっている様子がよくわかります。建物の端から見えるM字型の断面が、広くなったり狭くなったりして連続的に変化します。
WEB版『建築討論』に掲載されていたインタビューでは、設計したkwhgアーキテクツさんが設計時に考えられたことについて書かれていました。
このコンペでは、新庁舎が竣工するまで既存の建物の機能を残すことが条件でした。つまり新しく建築できるスペースは、既存建物が場所を占めていない部分。
その上で、建築を街に開くための新しい提案として、正面を持たずに周囲四方向に対してどこからでも入れることを基本構想の軸としたそうです。
一昔前の市庁舎などの公共施設は、街のシンボルとしての役割を持つことがよくあります。(例えば近代の名古屋市役所や京都市役所は、線対称の構成に強い正面性を持つファサード。)
ですが、敢えて正面性を持たず色々なところから入ってこられること、緩やかな曲面で内包性を創出していることが、この庁舎の公共空間においてポイントとなります。
商業施設でも駅前広場でもそうですが、「居てもいい場所」=「居場所」の需要というのは高まっているそうです。
目的を持った人が仕事やアクティビティを行う場所ではなくても、ただそこに居られるだけの場所。
そういう許容力のある場所が、庁舎のような公共施設にも増えてきています。
今後もいろいろな「公共性」の提案を見ていきたいと思います。
設計部 池内