2015/10/5 伊藤豊雄 講演会より
近代主義思想は
近代主義思想のもと作られた建築は
恐ろしいのは、そこにいる人間も均質化するのでは?
動物的本能が消えるのでは?という懸念。
今必要な事は
この思想の元、一つ一つの物件で挑戦し続けています。
以前、工事部の安江さんが紹介していた『みんなの森ぎふメディアコスモス』に私も行って来ましたので、重ねてブログに書き込み。
周辺の山々に呼応する様に屋根がうねっています。
建物の周りにはその土地にあった樹木の並木や植樹がされています。
地域の人々が入りやすい明るい森。奥の山へとつなげる緑の拠点となる場所です。
まだまだ若い森ですが、これから成長し市民の憩いの場へとなっていき行きます。
エスカレーターを上がりると、波打つ天井といくつもの傘が垂れ下がる光景が広がります。
この建物は「大きな家」と「小さな家」の2つで構成されています。
「大きな家」は建物全体を覆う格子屋根の部分、を指します。
「小さな家」は傘の部分を差し、「グローブ」と名付けられています。
現在、巷で普及している建物は中と外を明確に分け、内部を全て居住性の良い空間へと変えています。
高気密、高断熱等が顕著な例で、省エネと言えば高気密、高断熱だという声もあります。
これは西洋的な省エネの形です。
この言葉を少し思い返して下さい。
「メディアコスモス」は自然の力を利用し、エネルギーを抑える工夫をしています。
実は、伊藤先生が目指した省エネの形は日本の伝統的な民家なのです。
科学が発達していない時代、快適に過ごす為に様々な工夫が日本の民家にはされています。
・越屋根 / 熱い空気を上へと逃がしつつ、冷たい空気を引き込みます
・坪庭や打ち水 / 内外の気圧、温度差で室内に風を取り入れます
古来より日本の建物は自然の力を上手く取り入れ快適に暮らしていました。
この建物でも、「大きな家」屋根の部分に散水し、温度を調整したり、「小さな家」グローブのトップライトを開閉し、建物全体を自然の風で換気したりしています。
また、日本の家は縁側や土間など内外が曖昧な所があります。
障子一枚で外とやんわりと遮る感じ。
この建物でいうと、「大きな家」と「小さな家」の間が縁側にあたる部分になるのでしょうか。
さしずめグローブ内は障子の内側の部屋と言った感じ。
柔らかく遮られ、グローブ内には輻射を使った冷暖房設備があり、快適な空間です。
伊藤先生も「中と外が連続的に変わる昔の日本建築の様式を表現したかった。
こういう省エネを目指したくて、今回はちょっと実践出来たかな。」と謙虚におっしゃっていました。
確かに設計理念に挙げていたことを完璧には出来ていないにせよ
十分すごいと思います…
ただ単に、日本の古民家を再現するのではなく、その本質を受け止め昇華し出来た建物。
こういった物が人々に受け入れられ、広まっていけば新しい日本独自の文化が花開くかもしれませんね。
設計部 橋本でした。