こんにちは、設計部の池内です。
10月に訪れたGO TO 東京の旅、今回紹介するのは
ル・コルビュジエが設計した日本で唯一の建築、国立西洋美術館。
2016年に世界遺産に登録され、一躍注目を浴びたのが記憶に新しい建築です。このブログでも過去に紹介されてるかと思います。
この建築の原型はムンダネウムの世界博物館。
ムンダネウムとは1920年代後半に構想された未完の巨大プロジェクト、その中心に「無限成長美術館」として置かれたのが世界博物館です。
では「無限成長美術館」とは何かというと、方形ホールの中心から展示物が増えるとともに螺旋状に増築し美術館自身が成長していくという提案です。
増築はされていますが、残念ながら提案通りとはなってはいません。
外壁パネルはラトゥーレット修道院で使われたような、手触り感のある石植えパネル。割付はモデュロールに則っています。
この頃の作品はもうサヴォア邸に代表される白い箱時代のものではありません。
この日は、開催中の『ロンドン・ナショナル・ギャラリー』を目当てに多くの人がごった返していましたが、それを素通りして常設展だけ見てきました。
19世紀ホール
スロープは折り返すごとにシーンが切り替わり、歩いていくことで建築を体験する装置。
コルビュジエの提唱するプロムナードを体現する重要な要素です。
展示空間
低い天井は黒、高い天井は白と抑揚のきいた空間です。
この展示室での計画上の試みは、中3階の天窓から落ちてきた光が、展示空間に挿入されたボリュームを通して展示品を照らすということ。しかし直接光を絵画等に当てることはできないため、現在は天窓を塞ぎ、光源は人工照明となっているそうです。
19世紀ホールに展示されていた断面模型で見るとわかりやすい。
そして向かいに建つのは
東京文化会館。
コルビュジエの弟子、国立西洋美術館の設計にも携わった前川國男の代表作の一つです。
重厚感のあるコンクリートの庇が宙に浮き、下はガラス張りの開放的な空間となっています。重いものは上に、軽いものは下に、重力からの解放という近代以降の構成で、とにもかくにも大きい。
屋上に見える自由な造形のボリューム、水平に穿たれた窓、随所に見られる原色の塗装。
チャンディガールの建築がモデルと言われており、コルビュジエの流儀が感じられる建築言語です。
内部
紺色の天井と照明は夜空の天の川、茶色の床のタイルは木の葉を表しているそうです。
コルビュジエのプロムナードに対して、前川國男はエスプラナードという言葉を使ったそうです。
前者は誘導的に歩き建築を体験するといった感じですが、後者はそこらを自由に歩き回ることができ、当てもなく佇んでいられるような空間のこと。
石垣のような壁の大ホール
宙に浮く庇とは対照的に地面から立ち上がったような格好です。
ホールの中もぜひ見たかったのですが、次の目的地へ向かうことに。
最初から分かっていましたがやはり数時間では消化不良。
上野には他にも東京都美術館や法隆寺宝物館など見ておくべき名建築が多く、コロナ禍が落ち着き次に来れるときは時間をかけて見て回りたいと思いました。
次回は最終目的地、お楽しみに。