こんにちは、設計部の池内です。
前回のブログで紹介した分離派建築会100年展、
会場は京都国立近代美術館でした。
前面の神宮道を挟んでもう一つ有名な美術館があります。
今回紹介するのは
旧京都市美術館、
現在は京都市京セラ美術館と呼ばれています。
帝冠様式である旧京都市美術館の改修工事です。
帝冠様式は鉄筋コンクリート造に和風の屋根を載せた戦前日本の代表的な様式です。
コンペではこの威風堂々たる建築の外観をそのまま残しながら、地面をたわませて広場の空間をつくり、それをそのままアプローチとする青木淳氏の案が選ばれました。
メイン・エントランス、ミュージアム・ショップ、カフェが入る「ガラス・リボン」内部空間
白く抽象的な中央ホール、
縦動線の螺旋階段とエレベータータワーが対比的な構成をつくります。
螺旋階段
帝冠様式の建築は、権威的であろうとするために「不動」を表すシンメトリーな外観になります。
また、空調設備の技術が未熟な時代なので、コの字、ロの字型にして開口を多く取っていることも特徴です。
結果として中庭が対になって計画されることが多くなります。
その中庭を利用した「天の中庭」。(見れませんでしたが「光の広間」と対になっています。)
竣工時の白いタイルの意匠や配管。まぐさやプロポーションに時代性を感じる窓の意匠。
建造物を保存するときにできるだけ本来あった状態で残すのは鉄則ですが、中には修理・修復をしながら生きてきた建造物もあります。そこで本来の状態とは何かという難しい問題が出てきます。オーセンティシティの問題です。
また建造物の価値を守りながら活用しようという考え方があり、これはインテグリテと言われるものです。
広場の空間によって賑わいを生み出し、開かれた美術館として生まれ変わった京都京セラ美術館はインテグリティの良き事例だと感じました。
以上、中身の濃い京都の建築研修報告でした。