場所は日泰寺の参道から一本入った場所で、
覚王山アパートメントの向かい。
実際に現場を見に行くと、
そこは木々が生い茂る6メートル下った
急斜面の土地。
通常、急な斜面に建築する場合は、
造成に大きなコストがかかる。

※造成とは住宅などを建設するために、
 その土地に必要な環境や機能を整える工事のこと

施主の気持ちを考えると、
事業性の高い提案がしたい。
盛り土をせず、崖をうまく使う方法はないのか、
担当設計士は考えた。

この土地で最大限の建物を建てる場合、
15m高度地区の斜線制限を避ける必要がある。

パズルのように組み換え、
考え抜いた結果生まれたのが
表の通りからは2階建て、
裏から見ると3階建てに見える
地下1階+地上2階の構想だ。
(初期スケッチ)

事業性を考えるのは建築企画室だ。
プロジェクトに対する施主の希望や疑問も
細やかに汲み上げ、
トータルにサポートする。

視認性の高い表の通りに面した1階部分は
テナント、
2階は居住スペースで考えていた。
問題は地下の使い方だ。

多くの地下テナントは、認知しにくかったり、
地下階までの階段が薄暗く、
入店しづらい雰囲気を与えたり、
マイナスなイメージが思い浮かぶ。

そこで、土地の高低差を生かし、
片面完全採光を確保しすることで、
地下とは思えない開けたスペースを設計した。

秘密の隠れ家的テナントになったのだ。

施主の想いをカタチにした図面が出来上がり、
工事担当との打ち合わせが始まる。
工事担当者はその図面をさらに
違う視点から見ていく。

長期的に住みやすい設計になっているか、
テナントが入りトラブルに
なりやすい個所はないか。
「地下テナント床下部分、メンテナンス用の
入り口と通路を
もっと広くした方が良い。」
30年、40年と長く使っていただくには
メンテナンスが重要だ。

どれくらいの広さが必要なのか、
具体的な提案ができるのも
設計施工の当社ならではの強みだと思う。

着工前、工事の担当者は考えていた。
「どうすればこの崖地で
安全に工事ができるのか」

近隣の方々には安心を、
協力業者にとっては仕事のしやすい環境を。
それが良い建築に繋がり、
施主の想いをカタチにする。

今回は敷地面積いっぱいに建物を建てたい。
敷地に面する道路は道幅が広くなかったので
別の方法で動線確保が必須だった。
着工前に何度も現地に足を運び、
近隣の方々に話をし、
真裏の駐車場を
借りさせていただくことが出来たのだ。

「この広さがあれば協力業者も
仕事がしやすいだろう」
満を持して工事は始まり、
トラブルもなく順調に進んでいった。

毎日のように現場へ来て下さる施主。
「ここの素材を変更できないか」

普通なら既に着工していて変更は難しい現場。
全てを叶えられなくても
施主の想いを最大限叶えたい。
何とかできる方法を考え、
カタチにすることが出来た。

完成後、多くのお客様から言われることがある。

「私もこの土地で事業を考えたけど、
施工が難しいと断られた」
「あの急斜面にこんな建物が建つとは
思っていなかった」

東海・ビルドはこれからもTEAM-C.O.Aを軸に、
お客様に寄り添った
フレキシブルな提案をしていきたい。

設計士:増田 工事:長坂